ごあいさつ

2014年11月1日付けで臨床食管理学分野の教授を拝命いたしました竹谷豊です。

当教室は、1967年に故萩平博教授のもとに病態栄養学講座として開設され、その後1992年2月から2014年3月までの間は武田英二前教授が主宰され、臨床栄養学分野として発展してまいりました。萩平先生も武田先生も非常にご高名で多くの素晴らしい業績を残されておられるとともに、多くの人材を輩出してこられました。このような歴史のある教室を担当させていただくこととなり大変身の引き締まる思いとともに、大きな責任を感じております。また、このような機会をいただけたことは、これまでの多くの先生方のご指導と一緒に研究に取り組んできた学生の皆様のおかげであると感謝しています。

 

私は、1998年4月に徳島大学医学部栄養学科に入学し、1991年度の卒論生として当時の萩平博教授の主宰する病態栄養学講座に入りました。最初の指導者は、宮本賢一先生(現徳島大学医学部分子栄養学分野教授)でした。宮本先生は米国留学から帰国したばかりで、宮本先生と大学院生の先輩と私の3人でわずかばかりの機器でグルコーストランスポーターの分子生物学的な解析を始めたのが、最初の研究テーマです。1992年3月に栄養学科を卒業後、4月から徳島大学大学院栄養学研究科博士前期課程に進学し、研究室を医学部生化学教室に移し、山本尚三教授の指導の下、「各種プロスタノイドによる骨芽細胞シクロオキシゲナーゼの誘導機構の解析」をテーマに研究を行いました。2年間でしたが、酵素学、分子生物学、細胞生物学の研究手法の基礎を学ぶとともに、論文作成や研究室の運営など多くのことを学ばせていただきました。1994年3月に博士前期課程を修了し、1994年4月から武田英二先生が主宰されていた当教室の助手として採用され、教育・研究者の道を歩むこととなりました。

 

当教室に戻ってからは、大学院で学んだ分子生物学および細胞生物学の研究手法をいかして、教室の中心的なテーマであったリン酸トランスポーターの遺伝子クローニングおよび遺伝子発現調節機構の解析、およびビタミンD受容体遺伝子に関する研究に取り組みました。1998年12月に学位を取得し、1999年4月からは、米国テキサス大学サウスウェスタンメディカルセンターダラス校の細胞生物学講座のRichard G.W. Anderson教授の研究室で2年間留学する機会を与えていただきました。ここでは、PKCによる細胞膜カベオラ形成の調節機構について研究を行い、細胞生物学の研究手法を学ぶことができました。

 

2001年4月から助手として復職し、留学中に学んだ細胞生物学の解析技術を用い、ナトリウム依存性リン酸トランスポーターの細胞膜局在に関する研究を始めたほか、留学先で同僚であった東京大学腎・内分泌内科の一色政志先生にご教授いただき、新たに高リン血症と血管内皮細胞障害という研究を始めました。ナトリウム依存性リン酸トランスポーターの研究は、宮本賢一先生らのグループとともに科研費の特定領域研究の研究班として研究を発展させることができました。また、高リン血症と血管内皮細胞障害の研究は、ヒトを用いた臨床研究にまで発展させることができ、現在も主な研究テーマの1つとなっています。

 

現在は、これらの基礎研究をより臨床にフィードバックさせるために、高リン血症やリンの過剰負荷を軽減しつつ、食事のクオリティを保つことができるような食事管理法の開発を目指した研究に取り組んでいます。また、従来から取り組んで来た栄養素代謝異常と生活習慣病の発症などの解明に取り組み、新しい栄養管理法の開発につなげていきたいと考えています。

同時に、これまで栄養学分野に多数の人材を輩出してきた教室の伝統を大切に受け継いでいくことが重要な使命であると思っています。

 

今後の研究の方針としては、

1)臨床における栄養代謝異常の問題解決につながる臨床栄養学研究の推進

2)先進的な食事・栄養療法の開発と臨床研究の推進

を大きな課題とし、取り組んで参りたいと思います。

 

教室運営の方針としては、学生の自主性を尊重し、将来、自立した研究者として活躍していくために必要な力をもった管理栄養士(Dietitian Scientist)となってもらうことを目標にしています。将来、大学や企業などの研究者として活躍したい方はもちろんですが、管理栄養士として臨床現場で活躍したい方も研究を行う力、研究を進める際の考え方は、患者さんを診る上で極めて重要です。臨床能力は、症例をいかに多く経験するかということになりがちですが、重要なことは、症例を深く分析し、病態を合理的に評価し、エビデンスや過去の文献・症例などを基に適切な栄養管理法を選択していくこと、すなわち症例をいかに研究し、そこから学ぶかです。

 

時には、原著論文を読み、エビデンスがどのように確立されているのか、何がどこまで分かっているのかを考えなければなりません。場合によっては、自ら研究を行いエビデンスを蓄積していく(論文を発表する)ことも必要です。このような考え方は、基礎研究や臨床研究を進める際の考え方と同じです(下図参照)。従って、大学院で研究活動を行うことは、そのような考え方(リサーチマインド)を身につけるということになります。また、大学院の間には、できるだけ海外での学会発表も行ってもらい、国際的な感覚も身につけていただきたいと思っています。

 

じっくりと研究ができる機会は限られています。上記のことから、当教室では、できるだけ各自に独立したテーマを持っていただき、論文を完成させるように指導していきたいと思います。もちろん、テーマによってうまくいったり、いかなかったりすることもありますが、ひたむきに取り組むことで見えてくるものが必ずあります。また、研究を進める上では、チームワーク、コミュニケーションも必要です。1人1人の努力と配慮による円滑な教室運営は、自分だけでなく周囲のためにもなり、結果として教室全体の向上につながります。限られた資源で研究を進めるためには、創意工夫が重要です。常に、より効率よく、より綺麗に結果を出すために何が必要か、どうすれば良いかを考えてください。どんな小さな工夫でも構いません。そういう姿勢が、将来、研究者として、Dietitian Scientistとして活躍する際に必ずや役に立つことでしょう。

 

多くの学生の皆さんに、大学院に進学していただき、リサーチマインドを身につけて、将来、臨床栄養学の領域で活躍していただきたいと願っています。

 

臨床食管理学分野 教授  竹谷 豊

 

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